ここまでできる! ガーミンコーチの進化が止まらない

GPSと光学式心拍計で測定したトレーニングデータを無償提供アプリで解析し、個人目標を達成するために必要なトレーニングメニューを提示してくれる「Garmin(ガーミン)コーチ」の進化が止まらない。まるでパーソナルコーチをつけているように具体的なメニューが与えられ、それを着実に消化していくことでレベルアップが期待できる。

「なんのための練習なのか」などコーチの理論を動画で視聴して理解することで充実したワークアウトが可能になる

トップアスリートの多くが専属コーチと契約を結び、目標達成に向けてハイレベルな領域でトレーニングを積み上げている。プロとプロとのビジネスなので、指導にかかるマネーもハイレベルなのは当然だ。

jeffコーチの指導により、最初に設定した目標に対する「確実性」が変化していく

そんな幸せなトレーニング環境の一端を無償で一般アスリートに提供してくれるのが、Garmin(ガーミン)コーチだ。スマホなら無料でダウンロードできるアプリ、パソコンなら無料でログインできるホームページで、世界屈指のコーチたちからの専門的なアドバイスを受けることができ、検証済みのワークアウトを提示される。ガーミン製品のプロモーションのために提供される無料コンテンツなので、愛用者は賢く使いこなすのがオトクだ。

ランのコーチは現在のところ 5km、10km、ハーフマラソンのプランを提供してくれる

ラン、サイクリング、トライアスロンの大会に挑戦する人。健康維持や増進のために体重を落としたい人など、その人の目標やフィットネスレベルはさまざまだ。Garminの提供する無償トレーニングプランは、膨大なデータを集積し、それをGarminの特性を熟知したコーチ陣が汎用性のあるメニューを構築。目標達成を支援するというトレーニングプランなのである。

すでに何回がプランを実践してみたが、今回は自分にぴったりのプランが見つかった。ジェフ・ギャロウェイ氏の「5kmランニング」メソッドがじつにハマった。他のコーチよりもスキルを重視し、単純で無理のない技術練習を積み重ねていくことで、ペースアップを実現させるというものだ。ペースと距離をメインに構成されたメニュープランではなく、まさに専属コーチに指導をされているような実効力があった。

最初は簡単でもの足りないスキル練習から入っていったが、スキルを身につけるに従ってタイムも確実に向上していった。そして週を重ねるうちに同じスキル練習ながら回数が増えたりしてハードになっていく。後半はできるかできないかのギリギリの状態が続いた。

1週間のうちどれだけ練習できるかなどそれぞれの環境に応じた練習プランが提示される

ウォーキングをスキルメニューに取り入れているというのも新鮮な感触があった。ギャロウェイ氏は歩きという戦略的なブレイクを入れることで、ほとんどのランナーのタイムが実際に改善されることを発見。

このメリットを得るために、トレーニング中に試行錯誤することが重要で、Garminデバイスはこのプロセスを簡単にするのに役立つと、Garmin製品を有効活用できるのも魅力的だ。各ワークアウトにおいて、Garminデバイスがペースや次のステップに移行するタイミングを知らせてくれる。

GPSユーザーならkm単位のラップタイムは痛いほど把握している
初級者から中級者向けのプランなのでキロ単位のラップタイムは4分24秒が上限だ

個人のペースは最初に入力するが、そのレベルに基づいて、何十万人ものランナーに効果を発揮した方法が提案される。ワークアウトのスケジュールは持久力を伸ばし、より効率的に走り、スピードを向上するために調整されているという。

コーチを選択するとともに、個々の練習量や自己評価、そして目標とするタイムを入力する
ガーミンコーチはハーフマラソンや5kmなど個々のタージェットに応じたプランが用意されている

ケイデンスドリル

ケイデンスは1分間に各足が地面に触れた回数。ケイデンスドリルはケイデンスを増やすために設計されたもので、より速くより効率的に走ることにつながる。ケイデンスドリルは通常のペースで30秒走ることから始まる。ウォークブレイクを取った後にケイデンスドリルを繰り返すが、次のインターバルではケイデンスを増やすようにする。ウォッチがケイデンスを追跡し、目指す達成目標を提供してくれる。

アクセラレーショングライダー ドリル

ウォーキングからランニングにスムーズに移行し、また別のウォークブレイクへとスムーズに切り替える際に役立つよう設計されている。ウォーキングから始めて、シャッフル、スロージョギング、通常のジョギング、そしてランニングへとスムーズに切り替えていく。その後ウォーキングに戻り、グライドをなるべく長く持続しながらシャッフルへと切り替えて、その後ウォーキングをする。

5kmランはフルマラソンが最終目標でもベーストレーニングとして体験しておく価値がある

マジックマイル

パフォーマンスを予測してロングランに安全なペースを設定し、進行状況をモニタリングするために、定期的にマジックマイル(1.6km)を走る。ワークアウトのマジックランの部分にきたら、調子のいい日の通常のランよりも少し速めのペースで1.6km走る。その後、次のマジックランワークアウトでは、引き続き向上できるようにさらに速いペースで走る。計画の中の最後の2つの1.6kmはほぼ全力で走るが、怪我をしないように注意。

ヒルワークアウト

ヒルリピートでは、身体が丘の上り下りをこなせるようになるようにトレーニングする。ワークアウトのヒル部分では、5〜7%の傾斜が付いた坂を40~200mで駆け上り、歩幅を縮めてケイデンスを増やす。丘の最後の3分の1では息切れがしているはず。その後ウォークブレイクを取り、下り坂ではいいフォームを実践しながら、ランニングで坂を下りていく。足は地面に低く保ち、軽く地面を踏むようにして、歩幅が長くならないようにする。丘のふもとで準備が整ったら、デバイスのラップボタンを押してドリルを繰り返す。

スピードワークアウト

スピードワークアウトは、5kmマラソンの目標達成に向けてスピードを向上させるのに役立つ。スピードドリルでは、目標のペースよりもやや速めのペースで400mをランニングするだけ。Garminデバイスが、維持するべきペースを提案する。ウォークブレイクの後にこのドリルを繰り返す。

10月17日開催、東京マラソンへの16週メニューも

ガーミンが提供する各種トレーニングプランは、今回紹介したランニング用が5km、10km、ハーフマラソンの3タイプあり、それ以外にもサイクリングとトライアスロンが用意されている。さらにそれぞれのスキルに応じた週単位のトレーニングメニューや、レース当日をにらんだコンディショニングのプランも充実した。

マラソンメニュー(中級者)

例えば10月17日開催予定の東京マラソンにエントリーした人は、16週間のマラソンメニューが役立つ。初級者・中級者・上級者の3レベルが選択でき、週にどれだけトレーニングに費やせるかで無理のないやり方を教えてくれる。この新しいメニューには「クロストレーニング」の日も設定されていて、例えば「山登りをした」とか「シゴトで重い荷物を担いだ」などの日をこのメニューに置き換えることで、トレーニングを積んだという実績になり、「走らなくちゃいけない」という心的プレッシャーも軽減する。

東京マラソンの16週メニューは6月28日にスタート。次回はこの新コーチプランを実践レポートしたい。

●GarminのGPSデバイスレビュー特設サイト
【関連コラム】
●Garminコーチがさらに進化…パーソナルに目標達成を後押し
●Garminコーチ完結編…使いこなせば確実にタイムは伸びる!
●connect garmin.comのホームページ

3333段の石段を駆け上がるRed Bull白龍走が開催中止

レッドブルは、6月19日・20日に熊本県下益城郡美里町で開催を予定していた「Red Bull 白龍走=レッドブル・ハクリュウソウ」を、公衆衛生の状況と政府や自治体による対策に応じて中止を決定した。

2019年の白龍走 ©Suguru Saito / Red Bull Content Pool

中止に伴い、参加料は全額返金の手続きを進めていくという。

●Red Bull 白龍走のホームページ

大谷翔平が三刀流目に極めたいこと、ザバス新CMで語る

プロテイン市場売上No1ブランドのザバスがロサンゼルス・エンゼルス所属の大谷翔平(26)を起用した新テレビCM『筋肉の声』篇(30秒・15秒)を2021年6月1日から全国でオンエアする。また、同日から新ウエCM『高校時代から』篇(26秒)をザバス公式サイトで公開する。

1980年の発売開始から約40年にわたりプロテインを代表するブランドとしてあり続けたザバスは、多くのトップアスリートのパフォーマンスアップをサポートしてきた。高校時代からカラダづくりやコンディショニングを意識してきた大谷とは、2015年にアドバイザリー契約を締結して以来、食と健康のプロフェッショナルとして栄養面でサポートし続けている。

新テレビCM『筋肉の声』篇は、黙々とトレーニングをする大谷と大谷の“筋肉の声”が共演する。この大谷の“筋肉の声”を務めるのは、大人気アニメ「ONE PIECE(ワンピース)」のロロノア・ゾロ役でも知られる人気声優、中井和哉。ストイックにトレーニングに励む大谷と、中井が演じるユーモラスな“筋肉 の声”の共演が見どころ。

また、新ウエブCM『高校時代から』篇は、トレーニング中の大谷の映像の中に自身の高校時代の写真が次々と映し出される。高校時代からザバスとともに歩んできた大谷。過去を振り返りながら、当時胸に抱いていた将来の夢を大谷自身の声でナレーションしている。大谷の歴史が約30秒に凝縮された、ファンにはたまらない映像。

体感ザバス。きっと驚く。キャンペーン

キャンペーン期間:2021年6月1日(火)10:00~7月12日(月)15:00
第1期:6月1日(火)10:00~6月21日(月)9:59
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五輪開催可否にぶれず集中したい…ボート冨田千愛

ボート女子軽量級ダブルスカルで東京五輪代表となった関西電力の冨田千愛(とみたちあき)が5月14日、リモート会見に応じ、コロナ禍での揺れ動く心境と五輪への思いを語った。軽量級ダブルスカルでは大石綾美(アイリスオーヤマ)とペアを組むが、2016年リオデジャネイロ五輪に続くペアとなる。

冨田千愛。2019年世界選手権では日本女子ボート界初の快挙である2位に

選考から外れたクルーを思って喜びは封印

鳥取県出身。明大大学院卒。現在は福井県に活動拠点を置いての選手活動。女子軽量級シングルスカルの第一人者でもあり、2019年世界選手権では日本女子ボート界初の快挙である2位に入った。ただし軽量級のこの種目は五輪になく、もう1人とペアを組んでダブルスカルにエントリーする必要がある。

今回の代表選手選考はかなり複雑だった。

5年前はアジア予選で勝てば代表になれたが、今回は勝つだけではなく、日本の4クルーの中で「上位進出が期待できる」というパーセンテージによって2クルーが選考されるという条件だった。

5月5日から7日まで海の森水上競技場で行われるアジア・オセアニア大陸予選で、大石と冨田は女子軽量級ダブルスカルで優勝し、最終日のレース終了後に開催された日本ボート協会選考委員会が行われ、男子シングルスカルとともに女子軽量級ダブルスカルが東京五輪に派遣されることになる。

「アンチドーピングの検査が長くなってしまい、会場に戻ったときに大石選手に決まったと耳打ちされました。でも4クルーのうち2クルーしか五輪代表となれなかったので、他の2クルーのことを考えてあまり喜ぶのは失礼だなと思ました」

選考から外れたのは男子軽量級ダブルスカルの西村光生(アイリスオーヤマ)と古田直輝(NTT東日本)、女子シングルスカルの米川志保(トヨタ自動車)だったが、世界最終予選が5月15日から17日までスイスのルツェルンで開催されここで2位以上に入ると東京五輪出場権が与えられる。

「コロナ禍で苦労してきた全員がチームという思いが私にはあって、みんなで五輪に出場したいという気持ちも強いです」と冨田。

女子軽量級シングルスカルの冨田千愛(写真は準決勝のもの)

五輪をやる・やらないは選手としてはどうすることもできない

初参加のリオ五輪はどんなものかわからなかったので、がむしゃらになるしかなかったという。そして今回の東京五輪は1年延期になり、依然としてコロナ感染拡大も収束の兆しが見えず、「うれしいというだけの気持ちではありません」という。

苦しい時代が続いた。「どうなるのかなと思っていました」という。

「いまはスポーツをやっている場合ではないのかもという気持ちもありました。(五輪へのアプローチとなる)予選会さえできるかわからない状況でした。五輪をやる・やらないは選手としてはどうすることもできないので、五輪に出るという気持ちを抑え、レースに勝つことに集中していました」

目標は五輪ではなく、とにかく目の前にあることに淡々と集中していたという。

17日からスイスのワールドカップへ。2019年の世界選手権が最後の国際大会だったので、じつに2年ぶりの海外有力勢との対決となる。

「出場選手は五輪のセミファイナルに進出できる実力者ばかりなので、そこでどれだけ戦えるか、次の課題が見えてくる。東京五輪では決勝進出が目標です」

リオ五輪が終わって調子を落としていたときに福井県に活動拠点を移した。嶺南と言われる県の西部に住み、三方五湖で練習を積んでいる。

「湖だけど海水も混ざっていて、かなり荒れたコンディションになる」

東京五輪のボート会場である海の森水上競技場もいわゆる海上コースで、潮に流されたりする。それを修正しながらのレースになることが想定され、同様のコンディションで対応する力をつけていきたいという。

「福井県の食べものと言えばへしこが有名です。あまり食べたことがなくて、おいしくないよといわれていたけど、私は口に合いました。もともと鳥取なので海のものは慣れていたんだけど、こちらもおいしいものばかりです」

住み始めたときは、方言が関西弁に似たところがあって怖かったという。

「自動車教習所で私が鈍くさいこともあったんですけど、結構怒られました。でも福井の人たちは本当は優しく、みな家族のように接してくれます」

●日本ボート協会のホームページ

追いつかれるまで逃げ続けるワールドランに出てみた

追いつかれるまで逃げ続けるランニング大会、Wings for Life World Runが2021年5月9日、UTC協定世界時午前11時、日本時間で20時にスタートした。新潟県南魚沼市の会場に集まった参加者とともに精いっぱい逃げた。今回はそのレポート。

八色の森公園がグループ・アプリランの拠点に ©Jason Halayko for Wings for Life World Run

世界同時スタート。最後に捕まった人が世界チャンピオン

何万人のランナーが世界各地で一斉にスタートする。スタートから30分後にキャッチャーカーと呼ばれる追跡車がスタートから走り出し、参加者たちを追いかける。キャッチャーカーは最初ゆっくりと走り、時間を追うごとに徐々にスピードを上げていく。キャッチャーカーに追い抜かれた時点でその参加者はレースが終了となり、世界で最後に追い抜かれた参加者に世界チャンピオンの称号が与えられる。

そのユニークさに魅せられて、2020年大会に参戦する意欲満々だったが、新型コロナウイルス感染の第一波により、「フラッグシップ・ラン」と呼ばれる、前述したリアルなラン大会は中止。2021年もコロナ禍はなかなか収まらず、アプリを使って所定のコース、または自分の好きな場所で走る「アプリラン」は実施。

日本ではみんなで同じ会場に集まって走る「グループ・アプリラン」が南魚沼市で行われ、感染予防対策を行ったうえで101人が参加した。日本全国の参加者合計は1341人だったという。

ちなみに日本女子選手は過去に素晴らしい実績があり、2015年は渡邊裕子さんが56.33 km、2016年は吉田香織さんが65.71 kmを逃げて、世界チャンピオンとなっている。

今回の南魚沼でのグループ・アプリランは残念ながらキャッチャーカーと呼ばれる追跡車はなかったが、ダウンロードしたアプリがスマホ画面にバーチャルのキャッチャーカーを表示。アプリにはトレーニングモードが実装されるほか、ランニング中に音声による声援や情報取得も可能になっている。

スタート前にアプリ起動を準備する ©Jason Halayko for Wings for Life World Run

日本では南魚沼で。スマホ片手に101人が集まった

イベント当日の気温は15度で、スタート前にはかなり肌寒かったが、レースが始まってからはTシャツと短パンでちょうどいい感じ。午後8時なので当然紫外線の照射はなく、そういった意味ではコンディションはよかった。世界各国の会場ではもちろんお昼過ぎで気温が高いところ、なかなか身体が動かない未明の時間帯のところもあったはずで、レース環境として条件はまちまちだ。ただしこれは世界中の参加者が気持ちを一つにしてチャレンジするチャリティーイベントであって、メダルも賞金もない。だからバーチャルで容認できるのである。

8回目の開催となった2021年も、地球のあちこちで美しい景色とストーリーがあふれた。ひとりで走った人、少人数のグループで走った人、陽光に恵まれた中央ヨーロッパを走った人、冠雪の山を背景に走った人、日の出や日没を迎えたビーチ沿いを走った人、さらには、アフリカでキリンに見つめられながら走った女性もいたという。また、雨のスペインとアイルランド、雪のノルウェー、晴天のギリシャなど天候もさまざまだった。

記録も更新され、史上初の3度目の優勝を記録したランナーが誕生した。キャッチャーカーに追いつかれるまで66.8kmを走ったアーロン・アンダーソンさん(スウェーデン)が2017年、2018年に続く3度目の男子グローバルチャンピオンに輝き、60.2kmを走ったニナ・ザリーナさん(ロシア)が2019年、2020年に続く女子3連覇を達成した。2021年のランナーと車いすユーザーを合わせた平均走行距離は12.3kmだった。

新潟県南魚沼市にはアプリ計測ながらリアル参加の少人数イベントが行われた ©Jason Halayko for Wings for Life World Run

全額寄付金となる参加費は2700円。出場できるだけでなく、公式Tシャツとヘッドランプがついてくる。初めてのナイトランで、しかも5月上旬の新潟地方でのイベントということで、どんな気象条件でも対応できるように長袖やタイツなどを用意したが、参加者はこの公式Tシャツを着用してくださいとアナウンスされて、迷いは消えた。ノースリーブの高機能アンダーウエアを中に着込み、パンツは丈の短いレーシング用。ヘッドランプのズレを防止するため、自転車用のツバが小さいカスケット(帽子)をかぶった。

普段のラン練習ではスマホを携帯しないが、この日は必携なので上腕につけるランニング用のスマホホールダーを事前に購入。これは2021年10月、荷物預けができない東京マラソンのときにも必要なので、どんな感じなのかを試すチャンスにもなった。

約2.7kmの周回コースにはエイドステーションも仮設されたのがうれしい ©Jason Halayko for Wings for Life World Run

公園を拠点とした2.7km周回コースで逃走中

そしてスタートへ。起動したアプリを画面表示させていると1分前からカウントダウンが始まった。会場のアナウンスもそれにシンクロし、午後8時になると大きな赤丸のSTARTボタンが出現。忘れずにこれを押せば、あとは基地局3点の信号を受信して位置情報を取得する。これにより何km走ったかが計測され、世界レベルで瞬時に集計されるのだ。

ちなみにアプリは「位置情報の取得を許可する」や「バックグラウンドで稼動させる」をプリセットしておく必要がある。今回の場合はもちろんとどこおりなくセッティングしておいたが、途中で「省エネモードでスマホ画面が消える」現象に手をやいた。

キャッチャーカーが迫ってくる距離を確認しようとするたびに、消えた画面を走りながら再表示させる必要があった。スマホホールダーはタッチ感応タイプだが、さすがに指紋認証はできず、走りながらその都度暗証番号を入力するハメになった。そのため画面が消えない設定にしておくのが正解だ。

スマホを携えて走るのが特徴 ©Jason Halayko for Wings for Life World Run

途中でバッテリー切れの心配があったので、早めにチェックインしたホテルの部屋でフル充電してレースに臨んだのだが、結局2時間ほどの逃走ならバッテリー消耗は1/4くらい(購入後1年半の機種による実績)。基地局3点からの位置情報取得は消費電力もパケット通信料も微々たるものだった。

今回のコースはキャッチャーカーが走行しないことがあり、公園を拠点とする一般道の歩道をメインに2.7kmの周回コースをひた走る。イメージしていたよりも薄暗く、横断歩道の段差などはヘッドランプを照射して足もとを確認しながら先に進む必要があった。

途中1カ所に信号機があり、この部分は赤信号なら立ち止まるわけだが、記録をねらう参加者のなかにはUターンして歩道部を折り返すなどで立ち止まらない人も。これがリアルではないアプリランの裏ワザで、走り続けてさえいればUターンしても移動距離がカウントされるのである。それに気づいたときはもうバーチャルのキャッチャーカーが背後に迫っていた。

一般道の歩道を走る。1カ所だけ信号機があるので赤になったら足を止めて息を整える ©Jason Halayko for Wings for Life World Run

結果として20kmを過ぎたところでアプリが「追いつかれました!」という表示に。1時間54分29秒の逃走劇がフィナーレ。みんなと走るとアドレナリンがわいてきて、実力以上の走りができるはずだったが、慣れないナイトランにちょっと緊張してしまったのか目標をかなり下回る結果に。

日本人の最長距離は、南魚沼でのグループランに参加した男子の今井清隆さんが50.1km。これは世界全体で34位となる記録だ。女子の阿萬香織さんはアプリランで44.3kmを走破。

そんな記録にほど遠い結果となったが、やはりリアル大会は楽しいし、頑張れる。2022年は世界がかつての日常を取り戻し、追い抜きながら「頑張れ!」とか、追い抜かれながら「ナイスラン!」なんて言われながら走ってみたい。

2022年は5月8日開催に決定

世界的な新型コロナウイルス感染拡大の状況は見通せないが、所定のコースを走るフラッグシップ・ランは2022年以降に開催される計画だ。すでに2022年5月8日に開催されることが決定し、参加者事前登録が始まった。イベント詳細は今後明らかになるが、再チャレンジして、今回の経験をいかしながらもっといい記録を目指したいと思う。

会場の最寄りとなる浦佐駅は首都圏からのアクセスがいい。上越新幹線の停車駅でもあり、駅改札口から会場となる八色の森公園までは歩いて数分。クルマなら関越自動車道の大和スマートICから数分。スタートが夜8時なので、当日帰りよりも付近に宿を取り、その日は疲れをいやすのがおすすめだ。

意外とあっさりと21km過ぎに捕まったが、リッパな完走賞がダウンロードできてうれしすぎる

追いつかれるまで逃げるラン…2021年はアプリで実施

ウィングスフォーライフ・ワールドランのニュース記事

●Wings for Life World Runのホームページ

追いつかれるまで逃げるラン…2021年はアプリで実施

全世界で一斉にスタートし、徐々にスピードを上げていくクルマから逃げ続け、最後に捕まった選手が世界チャンピオンとなるランニングイベント 「Wings for Life World Run=ウィングスフォーライフ・ワールドラン」が日本時間の5月9日20時(UTC協定世界時の午前11時)から行われた。

101人が参加した南魚沼のグループ・アプリラン ©Jason Halayko for Wings for Life World Run

脊髄損傷の治療方法発見に取り組む研究への資金助成を行っているWings for Life(ウィングスフォーライフ財団)が主催。レッドブルをはじめとするパートナー企業が運営費用を負担することで、参加費2700円(日本円の場合)の全額が研究助成資金として活用される。

スタート前にアプリ起動を準備する ©Jason Halayko for Wings for Life World Run

日本全国で1341人参加。南魚沼ではリアルに101人

開催8回目の2021年は世界的な公衆衛生の状況を考慮して、設定されたコースを走るフラッグシップランは延期し、スマホを使っていつも走っているコースを走るアプリランとして開催された。これに、全世界で車いす利用者を含む18万4236人が参加。男子はスウェーデンのアロン・アンデルセンが距離66.8km、女子はロシアのニナ・ザリーナが60.2kmを逃げて世界チャンピオンとなった。

新潟県の南魚沼市ではアプリランの参加者が集まって走るグループ・アプリランを実施し、感染予防対策を行ったうえで101人が参加した。日本全国の参加者合計は1341人で、男子は今井清隆さんが50.1km、女子は齋藤和美さんが24.6kmの最長距離を逃げた。

八色の森公園がグループ・アプリランの拠点に ©Jason Halayko for Wings for Life World Run

南魚沼市出身で、スキーハーフパイプのソチ五輪銅メダリストの小野塚彩那(おのづかあやな)も初出場した。

南魚沼市出身で、スキーハーフパイプのソチ五輪銅メダリストである小野塚彩那も参加 ©Jason Halayko for Wings for Life World Run

トレーニングとして自転車では走るが、ランはそれほど行わないという小野塚。「外国のレッドブルアスリートの友達をはじめ、世界中のスキーヤー友達が以前からウィングスフォーライフ・ワールドランに参加していて、イベントは知っていました。世界同時にスタートして、同じ瞬間を走るのはとても素晴らしいと思います」という。

「昨年、身近な人が脊髄損傷したのでその人のために走りたいという思いと、地元開催ということで参加しました。チェアスキーの選手が知り合いに何名もいて、そういう人たちと海外で生活したことがあるので、脊髄損傷はすごく身近なものと感じます。自分含め、人はいつか脊髄損傷になるかもしれないので、こういう形でチャリティーで走れて、その参加費が研究支援に充てられるというのは本当に有意義なイベントだと思います。今後さらに走る方が増え、研究が進み(車いすの)みなさんが立ち上れるようになっていけたらなと思います」

車いすラグビーでアテネと北京のパラリンピックに出場した高橋義信さん(46=南魚沼市)も参加 ©Jason Halayko for Wings for Life World Run
一般道の歩道を走る。1カ所だけ信号機があるので赤になったら足を止めて息を整える ©Jason Halayko for Wings for Life World Run
約2.7kmの周回コースにはエイドステーションも仮設されたのがうれしい ©Jason Halayko for Wings for Life World Run

約5億5000万円が脊髄損傷の治療研究のために

Wings for Life World Runは通常のランニングイベントと異なる。世界中のランナーが一斉にスタートするだけでなく、ゴールがないのが特徴だ。スタート30分後にキャッチャーカーと呼ばれる追跡車がスタートし(アプリ上ではバーチャルのキャッチャーカーを画面表示)、参加者たちを追いかける。所定の時間ごとにスピードを上げるキャッチャーカーに追い抜かれた時点で参加者はレース終了となる。

スマホを携えて走るのが特徴 ©Jason Halayko for Wings for Life World Run
レッドブルアスリートでスカイランニングの世界トップ選手、上田瑠偉も逃げる ©Jason Halayko for Wings for Life World Run
大会から提供されたTシャツとヘッドランプを着用して逃げる ©Jason Halayko for Wings for Life World Run

2021年は18万4236人の参加者により410万ユ ーロ(約5億5000万円)が集まり、全額がWings for Life財団に研究助成費として寄付される。

新潟県南魚沼市にはアプリ計測ながらリアル参加の少人数イベントが行われた ©Jason Halayko for Wings for Life World Run

追いつかれるまで逃げ続けるワールドランに出てみた

Wings for Life World Runの参加レポート

●ウィングスフォーライフ・ワールドランのホームページ