ブエルタ・ア・エスパーニャで最初に深紅のジャージを着たのは

2019年の第74回ブエルタ・ア・エスパーニャは個人総合1位のリーダージャージがそれまでの黄色から赤色になって10周年。「深紅のジャージ」という意味であるマイヨロホと呼ばれるジャージは数多くのスター選手が着用してきた。

2010ブエルタ・ア・エスパーニャの初日にマイヨロホを獲得したマーク・カベンディッシュ

ツール・ド・フランスの黄色いジャージ、マイヨジョーヌとの差別化を図るため、2010年にブエルタ・ア・エスパーニャのリーダージャージは赤色に変更された。初日はチームタイムトライアルが開催され、トップタイムをたたき出したHTCコロンビアの中で最初にフィニッシュラインを通過したマーク・カベンディッシュ(英国)が最初の着用者となった。

「深紅のジャージを身につけるのはこの上もない誇りだ」と当時のカベンディッシュ。
「ただしこれはチーム全員で獲得したものだから、ボクは10%ほどしか栄冠に貢献していない」

そして第3ステージでは得意とする丘陵で抜け出したオメガファルマのフィリップ・ジルベール(ベルギー)が首位に立ち、カベンディッシュからマイヨロホを奪っている。

ブエルタ・ア・エスパーニャはグランツールの中では最も遅い、1935年に始まった。最初のリーダージャージはオレンジ色。1941年に白色のリーダージャージが登場したが、翌年にはオレンジ色に戻っている。さらに1945年には赤色、1946年から1950年までは白地に赤いラインが入ったデザインに。スペイン内乱の非開催時期を経て、1955年から1998年までは黄色(1977年のみオレンジ色)。そして1999年から2009年までは金色となったが、当時の技術力として発色が容易ではなく、ツール・ド・フランスのマイヨジョーヌと区別がつきにくかった。

2010ブエルタ・ア・エスパーニャ第3ステージで優勝し、マイヨロホを獲得したフィリップ・ジルベール

マイヨロホを着用したのは14カ国、35選手

マイヨロホをこれまで最も多く着用したのは英国のクリストファー・フルームで、日数にして27日。実際は合計20日だが、2011年大会のフアンホセ・コボが不正薬物使用で失格となり、フルームが7日繰り上げとなった。

これに続くのはビンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)で20日。アルベルト・コンタドールとホアキン・ロドリゲス(ともにスペイン)が17日。ナイロ・キンタナ(コロンビア)が14日。サイモン・イェーツ(英国)が11日。ファビオ・アルー(イタリア)が7日。エステバン・チャベス(コロンビア)とトム・デュムラン(オランダ)が6日と続く。

国別では地元スペインが53日。英国が45日。イタリアが28日。コロンビアが24日。フランスが8日。オランダが7日。ベルギーが6日。

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バルベルデが1番…ブエルタ・ア・エスパーニャ暫定リスト

世界チャンピオンのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がナンバーカード1。8月24日に開幕する第74回ブエルタ・ア・エスパーニャは8月20日、出場22チームの暫定リストを発表。前年の覇者サイモン・イェーツ(英国、ミッチェルトン・スコット)が不在であることから1番はバルベルデが着用するとした。

世界チャンピオンのアレハンドロ・バルベルデ © Pauline Ballet

今大会には過去に総合優勝した選手が3人出場する。バルベルデは10年前となる2009年の総合優勝者。2015年のファビオ・アルー(イタリア、UAEエミレーツ)、2016年のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がこれに続く。その中でもモビスターはバルベルデとキンタナに加え、2019ジロ・デ・イタリアを制したリカルド・カラパス(エクアドル)、2018パリ〜ニース優勝のマルク・ソレル(スペイン)がいてだれもがエースとなれる布陣。

南米出身の有力選手が多いのも特徴。2018年総合3位のミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、2016年総合3位のエステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)、EFエデュケーションファーストはダニエル・マルティネス、セルジオ・イギータ、リゴベルト・ウランのコロンビア選手を起用した。

モビスターに匹敵する総合力を持つのがユンボ・ビスマ。プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)とステフェン・クライスバイク(オランダ)はジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスの総合3位。平たんステージではトニー・マルティン(ドイツ)、山岳ではジョージ・ベネット(ニュージーランド)、ロベルト・ヘーシンク(オランダ)、セップ・クス(米国)が戦力となる。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュとクリテリウム・デュ・ドーフィネで優勝したヤコブ・フルサング(デンマーク)はツール・ド・フランスで落車リタイアしたが、この大会に復帰。2015年に総合3位になったボーラ・ハンスグローエのラファウ・マイカ(ポーランド)も参戦する。

サンウェブはウィルコ・ケルデルマン(オランダ)。2018年のツール・ド・フランスで新人賞を獲得したピエール・ラトゥール(AG2Rラモンディアル)はツール・ド・フランスを欠場したが、ブエルタ・ア・エスパーニャに登場。イネオスはジロ・デ・イタリアで落車したタオ・ゲオゲガンハート(英国)が復帰。

グランツールすべてでステージ優勝したロット・スーダルのトーマス・デヘント(ベルギー)もエントリー。スプリンターはボーラ・ハンスグローエのサム・ベネット(アイルランド)、UAEエミレーツのフェルナンド・ガビリア(コロンビア)、トレック・セガフレードのジョン・デゲンコルプ(ドイツ)、グルパマFDJのマルク・サロー(フランス)、ミッチェルトン・スコットのルカ・メズゲッツ(スロベニア)。

若手選手ではツール・ド・ラブニールで勝ったUAEエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)が初出場する。

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新城幸也、ログリッチェ、キンタナ…ブエルタ・ア・エスパーニャ参戦

バーレーン・メリダの新城幸也が8月24日に開幕する第74回ブエルタ・ア・エスパーニャに参戦する。3月のケガから復帰し、2015年、2016年に続く3度目の出場を果たした。過去のグランツール出場11回で全完走の新城だけにどんな活躍をするのか期待される。

バーレーン・メリダの新城幸也

グランツールと呼ばれる三大ステージレースの最後を飾るブエルタ・ア・エスパーニャ。全23間で、9月15日に首都マドリードにゴールする。前年の覇者サイモン・イェーツ(英国、ミッチェルトン・スコット)をはじめとする有力選手が欠場し、これまで栄冠にあと一歩届かなかった悲運の選手らがタイトル獲得に挑む。

7月のツール・ド・フランスで大活躍したユンボ・ビスマは、ツール・ド・フランス総合3位のステフェン・クライスバイク(オランダ)と、5月のジロ・デ・イタリアで終盤に首位を陥落したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)のダブルエースを送り込んできた。ログリッチェはジロ・デ・イタリアで疲れ果て、ツール・ド・フランスをパス。今季のグランツールを回避することも選択肢のひとつだったが、2020年の大きな目標に向けて経験値を積むことを選んだ。

テレマークポーズを取る元ジャンプ選手のログリッチェ ©Massimo Paolone/LaPresse

「モナコの自宅にいて療養していたが、ブエルタ・ア・エスパーニャに向けて高地トレーニングを積んでいる」とリベンジに燃える。

ミッチェルトン・スコットは前年覇者のサイモンに代わって双子のアダムがエースとして出場するはずだったが、チームはアダムを外し、コロンビアのエステバン・チャベスをリーダーに起用した。2016年に総合3位となったチャベスは、「ブエルタ・ア・エスパーニャのコースはボクに向いているし、なにしろ暑いのが大好きだ」と悲願の初優勝をねらう。

ジロ・デ・イタリア第8ステージを終えて山岳賞ジャージを着るエステバン・チャベス © Gian Mattia D’Alberto – LaPresse

「グランツール初挑戦は2014年のブエルタ・ア・エスパーニャで、そのときの興奮をよく覚えているよ」

地元スペインチームのモビスターは世界チャンピオンのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)、2019ジロ・デ・イタリア総合優勝のリカルド・カラパス(エクアドル)、そして同チームでのラストイヤーとなるナイロ・キンタナ(コロンビア)のトップ3をブエルタ・ア・エスパーニャに送り込む。キンタナは来季フランスのアルケア・サムシックに移籍することが決まっている。

ナイロ・キンタナが2019ツール・ド・フランス第18ステージを制した ©ASO Pauline BALLET

一方、ジロ・デ・イタリア優勝を期待されながらケガで途中棄権したサンウェブのトム・デュムラン(オランダ)は欠場する。2018年はジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスで総合2位になったが、今季はタイトルなしで終わりそうだ。デュムランはブエルタ・ア・エスパーニャ出場を望んでいたが、チームは「開幕までに復調しない」と判断して8人のメンバーからデュムランを外した。

トム・デュムラン © Massimo Paolone – LaPresse

バーレーン・メリダのドメニコ・ポッツォビーボ(イタリア)は交通事故により欠場。ブエルタ・ア・エスパーニャでのエースを託され、その強化練習中の事故だった。

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ブエルタ・ア・エスパーニャが各区間距離を最終修正

8月24日に開幕する第74回ブエルタ・ア・エスパーニャは各ステージの距離を最終的なものに修正した。

2019ブエルタ・ア・エスパーニャのコース

2019年のコースは地中海に近いサリナスデトレビエハでのチームタイムトライアルで開幕し、50回目となるマドリードにゴールする。全23日間。平たんステージは6、中程度の山岳区間が4、平たんながらゴールが峠の頂上に設定された区間が2、山岳ステージが7、個人タイムトライアルとチームタイムトライアルが各1。休息2日。

8月24日(土) 第1ステージ サリナスデトレビエハ〜トレビエハ 13.4km(チームタイムトライアル)
8月25日(日) 第2ステージ ベニドルム〜カルペ 199.6km★
8月26日(月) 第3ステージ イビ・シウダドデルフゲテ〜アリカンテ 188km★
8月27日(火) 第4ステージ クリェラ〜エルプイグ 175.5km
8月28日(水) 第5ステージ レリアナ〜ハバランブレ天文台 170.7km★★
8月29日(木) 第6ステージ モラデルビエロス〜アレスデルマエストラト 198.9km★
8月30日(金) 第7ステージ オンダ〜マスデラコスタ 183.2km★★
8月31日(土) 第8ステージ バルス〜イガラダ 166.9km★
9月1日(日) 第9ステージ アンドラ・ラベリャ(アンドラ)〜コルタルスデンカンプス(アンドラ) 94.4km★★★
9月2日(月) 休養日
9月3日(火) 第10ステージ ジュランソン(フランス)〜ポー(フランス) 36.2km(個人タイムトライアル)
9月4日(水) 第11ステージ サンパレ(フランス)〜ウルダクスダンチャリネア 180km★
9月5日(木) 第12ステージ シルクイトデナバラ〜ビルバオ 171.4km★
9月6日(金) 第13ステージ ビルバオ〜ロスマンチュコス 166.4km★★★
9月7日(土) 第14ステージ サンビセンテ・デラバルケラ〜オビエド 188km
9月8日(日) 第15ステージ ティネオ〜サンチュアリオデルアセボ 154.4km★★★
9月9日(月) 第16ステージ プラビア〜アルトデラクビリャ 144.4km★★★
9月10日(火) 休養日
9月11日(水) 第17ステージ アランダデドゥエロ〜グアダラハラ 219.6km
9月12日(木) 第18ステージ コムニダドデマドリード〜ベセリルデラシエラ177.5km★★★
9月13日(金) 第19ステージ アビラ〜トレド 165.2km
9月14日(土) 第20ステージ アレナスデサンペドロ〜プラタフォルマ・デグレドス 190.4km★★★
9月15日(日) 第21ステージ フエンラブラダ〜マドリード 106.6km ★は難易度

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サンウェブはケルデルマンをエースにブエルタ・ア・エスパーニャ参戦

サンウェブが8月24日に開幕するブエルタ・ア・エスパーニャの出場8選手を発表した。ウィルコ・ケルデルマン(オランダ)を総合成績の上位をねらうエースに起用し、経験豊富なニコラス・ロッシュ(アイルランド)をアシストに、ニキアス・アルント(ドイツ)がキャプテンを務める。

●サンウェブのブエルタ・ア・エスパーニャ出場8選手
ニキアス・アルント(ドイツ)
ウィルコ・ケルデルマン(オランダ)
カスパー・ピーダスン(デンマーク)
ロバート・パワー(オーストラリア)
ニコラス・ロッシュ(アイルランド)
マイケル・ストーラー(オーストラリア)
マーティン・トゥスフェルト(オランダ)
マックス・バルシャイド(ドイツ)

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フルームが繰り上がり総合優勝…2011ブエルタ・ア・エスパーニャ

2011ブエルタ・ア・エスパーニャで13秒遅れの総合2位だった英国のクリストファー・フルーム(当時スカイ、現イネオス)が同大会の総合優勝者となった。総合1位だったフアンホセ・コボ(スペイン)が不正薬物使用の嫌疑に関して意義申し立てをしなかったことで失格が決定となり、フルームが繰り上がって優勝者となった。

2011ブエルタ・ア・エスパーニャ最終日の表彰台。中央がコボ、右がフルーム、左がウィギンス ©Unipublic

これによりフルームは、2012年に総合優勝したブラッドリー・ウィギンスに代わってブエルタ・ア・エスパーニャを初めて制した英国選手となった。

2011ブエルタ・ア・エスパーニャでフルームがアタック ©Unipublic

フルームのグランツール優勝はブエルタ・ア・エスパーニャ(2011、2017)、ジロ・デ・イタリア(2018)、ツール・ド・フランス(2013、2015、2016、2017)の合計7勝となった。

2011ブエルタ・ア・エスパーニャのフルームとコボ ©Unipublic
リーダージャージのコボをフルームがマークする ©Unipublic
2011ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝したフルーム ©Unipublic

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