有害物質をなくすシューズ製造工程をKEENがオープンソース化

次世代に豊かな自然環境を残していこうと、米国オレゴン州に本社を置くKEENが2012年から<Detox the Planet イニシアティブ>をスタート。サプライチェーンから有害な化学物質を特定・除去し、それらを安全かつ効果的な他の手段に置き換えた環境負荷を最小限にした製品づくりを積極的に行っている。

2003年創業のこのシューズメーカーは、出自や性別、世代を超えて「誰もがいつでもソトを 楽しめ、やりたいことを実現できる世界」を目指す。よりよい暮らしとソトの冒険へいざなう、オリジナルかつ汎用性あるアウトドア・フットウェアブランドだ。環境保護、気候正義、そして災害支援、ジェンダー平等など社会正義への取り組みを「キーン・エフェクト」と呼び、この活動を推進している。

KEENは2021年4月、地球環境について考え、共にアクションを起こし、地球をデトックスする<Detox the Planet>月間を実施。第一弾として、フットウェアの撥水加工プロセスから有害化学物質である PFCs を排除する PFCFREE(ピーエフシーフリー)のフットウェア製造過程を<GREEN PAPER>としてオープンソース化した。

撥水加工から排除するのは環境や健康に害を及ぼす有害化学物質

撥水加工は、アウトドア業界では欠かすことのできない技術であり、アウトドア・フットウェアでも多くの製品に採用されている。その撥水加工に一般的に使用されているPFCsは、PFAS(パーフルオロア ルキル物質およびポリフルオロアルキル物質)という名称でも知られる、約 5000種のフッ素化合物 の総称であり、自然界で分解されにくいことから<フォーエバーケミカル(永遠の化学物質)>とも呼ばれている。

これらの有害な化学物質は多くの場合、汚染された水や廃棄物を通じ、化学物質や部品、完成品の製造が行われている環境中へと入り込み、容易に拡散する。この、環境や人間の健康に害を及ぼすことが判明しているPFASは、エベレストのベースキャンプからヒトの母乳まで、どこででも見つかっているという。

非営利アドボカシー団体である環境ワーキンググループが2021年1月に行い、SCIENTIFIC AMERICAN誌に掲載された研究では、「大多数の米国人の飲料水には<永遠の化学物質>が含まれている可能性が高い」とされ、問題が広範囲におよんでいることが明らかになった。さらに「これらの化合物が自然界で分解されるには、数百年あるいは数千年かかることすらある。また、体内に蓄積され健康被害を引き起こす可能性もある」とも述べられている。

KEENでは「予防原則(Precautionary Principle)」を採用し、部品や材料で不必要に使用されているPFCを特定・除去してきた。具体的には、最小部品に至るまですべての仕様書を完全に精査し、ベンダーやパートナーの協力のもと、サプライチェーン内からまず約65%のPFCsを速やかに除去することができた。

残りの35%については、4年にわたり膨大な時間とリソースを投入し、専門家の協力のもと、PFCを用いない撥水ソリューションを開発。研究と試験を重ね、安全で効果的、かつ現実的なソリュー ションが誕生した。2014年にPFC-FREEの取り組みをスタートし、今日の目標に達成するまでに費やした時間は約1万時間。その結果、環境中に排出されるPFCsを180トン以上削減した。

●KEENの関連ホームページ

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