首位エヴェネプールがコロナ陽性でジロ・デ・イタリア除外

スーダル・クイックステップのレムコ・エヴェネプール(ベルギー)が第106回ジロ・デ・イタリアを新型コロナウイルスに罹患したため大会から離れることになった。同選手は5月14日の第9ステージ・個人タイムトライアルで優勝し、6日ぶりに首位に返り咲いた。その日に受けたテストで陽性が発覚し、レースを去ることになった。

6日ぶりにマリアローザを奪還したエヴェネプール ©Massimo Paolone/LaPresse

ジロ・デ・イタリアは翌日の15日は休息日で、16日の第10ステージで総合1位にアップしたゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ)がマリアローザを着用することになるが、「いい総合優勝争いを本当に楽しみにしていた。ジロ・デ・イタリアで首位に立つことは大きな名誉だが、同時にこれはリーダージャージを獲得したい手段ではない」と、トーマスはエヴェネプールに配慮した発言。

【ツール・ド・フランス現場雑感】帰国時のPCR検査をパリで初体験

第109回ツール・ド・フランスは最終日前日となる7月23日、第20ステージとして距離40.7kmの個人タイムトライアルが行われ、ユンボ・ビスマのワウト・ファンアールト(ベルギー)がトップタイムを叩き出し、今大会3勝目、大会通算9勝目を挙げた。

第20ステージを制したファンアールト ©A.S.O. Charly Lopez

首位ヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)は区間2位の好タイムを記録してマイヨジョーヌを堅持。初の総合優勝を確実にした。

マルク・ヒルシ ©A.S.O. Pauline Ballet

この日の区間優勝はビンゲゴーのチームメートであるファンアールトで、「チームから総合優勝者が誕生することに興奮している。彼は人間としてもしっかりしている」とコメント。

今大会3勝目、大会通算9勝目と個人記録も際立つが、ビンゲゴーを連日献身的にアシスト。ファンアールトがマイヨジョーヌ獲得の立役者となったことは間違いない。

ビンゲゴーは中間ラップタイムで暫定トップと好走 ©A.S.O. Pauline Ballet

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)
マイヨベール(ポイント賞)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

2022ツール・ド・フランス第20ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

15分で終わったPCR検査、そして検査結果はさり気なく到来

2022年はこれまでのツール・ド・フランス取材よりも1日前にパリ入りする必要がありました。エールフランスが減便し、大会翌日の朝の帰国便しかフライトしていないため、この日にフランス政府推奨の検査機関があるパリでPCR検査を済ませておかないといけなかったからです。

PCR検査機関で7時半の開業を待つ人たち

パリでボクの到着を待っていてくれたのは、40年前に入学した大学フランス文学科でボクの後ろに座っていた同級生でした。つまり山口姓で、名前もちょっと似通っています。現在はパリ在住で、めったにない機会なので連絡を取り合いました。

この歳なのでボクのことを「山口くん」と呼んでくれる人はもはやほとんどいないんですが、そう呼ばれることのなんと心地よいことか! そしてボクも学生時代と同じで「山口さん」と呼びます。

かつての同級生の名前が次々と出て、一番楽しかったころの記憶が蘇りました。会ってよかった。山口さん、これからもパリで頑張ってください。

沿道の盛り上がりを楽しみながら仲間が集まる生活が戻ってきた ©A.S.O. Charly Lopez

午前9時にPCR検査をした結果が午後4時に。結果は「ネガティブ!」

この懐かしい再会の前に、帰国に向けた大事なタスクを済ませていました。日本政府が帰国時に義務づけているコロナ陰性証明取得のためのPCR検査です。以下、2022年7月24日現在の状況でご紹介しています。

パリ16区にあるラボ。フランス政府推奨のPCR検査機関リストにあった

日本人が日本に帰国する際は帰国便離陸前72時間以内に医療機関でPCR検査を受け、医師が発行してくれる陰性証明を提示する義務があります。町の薬局などでできる検査はおおよそ不可で、鼻咽頭ぬぐい液で抗原定量検査など指定された方法でないと搭乗すら認めてもらえないとのこと。そのためフランス政府が推奨する病院を調べ、検査日時を予約しました。

さてフランス政府が推奨する検査機関はホームページでリスト掲載されています。でも電話して予約をするのって大変ですよね。そんなときは旅行代理店に依頼するのが確実なのでオススメします。その手数料はボクの場合、35ユーロでした。別コストになりますが現地オペレーターに付き添ってもらうこともできるそうです。

実際にどんな段階を踏んで陰性証明を取得するか。

  • PCR検査機関に予約を入れる。メールで予約受け付け表が届く。
  • 検査機関を訪れて問診票に記入。受付事務に処状況を確認しながら、50ユーロを現金で支払う。フランスの健康保険証を持っている人は無料。
  • 日本政府が認める検査方法で検体を採取。わずか3分ほど。
  • 数時間後に登録したメールに結果が記載されたホームページアドレスが届く。フランス語の証明がダウンロードできる。
  • 日本の場合、フランス語の陰性証明は認められないので、翌日に改めてPCR検査機関を訪ねて証明書をもらう。
パリのレンタルサイクルシステム、ベリブがeバイク化していた

ボクが検査機関を訪れたのは7月23日の午前9時。前日までにピレネー山脈から900kmを移動して、前夜にパリまで20kmほどのホテルに到着。検査機関には遅れてはならぬという通達を受けていたので、まさかの朝の渋滞でドキドキしないように朝7時前にホテルを出発したらわずか30分で到着してしまいました。

パリの土日は路上パーキングが無料なので検査機関の真ん前に駐車してしばらく観察。開業時間の7時半にはすでに3人が並んでいました。その後も分刻みの予約者があとをたたずに医療機関を訪れていました。

ボクは近くを散策してブランジュリー屋さんでパンとコーヒーをいただきながら時間を費やし、予約時間の9時に足を踏み入れました。フランス語の問診票を記入することになりますが、想定外の質問としては「最後のワクチン接種の日時」と「これまでコロナ罹患したか。した場合は罹患日」という項目がありました。

医療機関は次々と検査希望者が訪れますが、予約時間がばらついているのでほとんど待たずに事務担当者のチェックに。パスポート番号や生年月日が正式に入力されているかを訪ねられ、50ユーロの支払いをその場でしているうちに、担当者が検体容器に貼るボクの名前のシールを出力。

3年ぶりに訪れたパリは自転車レーンが倍増。車道と同じ幅のレーンがセーヌ川沿いに伸びる

そしていよいよ採取。女性ドクターが小部屋に案内してくれるんですが、その隣に高所作業をする脚立がなぜか片付けられずに置いてあって、そんなもんなのかなあと心が和みました。

病院や検査機関はマスク必着なのですが、検査時は鼻の穴が露出するまで下げろと、それでいて口は出すなと指示されました。大きなリクライニングシートに深く座り、あごを上に向けるような体勢でおよそ20秒くらい鼻腔に綿棒を差し込まれてぐるぐるされ、「以上」とそっけなく。

「セ・フィニ?」と質問すると「セ・フィニ!」と。なんのあいさつもなくその施設から追い出されました。

夕方3時半過ぎにその医療機関からメールが到着し、ログインアカウント作成を求められ、それが受理されると「検査結果」のページにアクセスが可能になります。すぐに再度のメールがあって、ログイン可能になったので、検査結果をのぞいてみると「ネガティブ!」の文字が。

以上全てフランス語での進行でしたが、翻訳ページを活用すればなにを求められているのかが把握できるので、問題はないと思います。

2019年に片側の尖塔が火災で崩壊したパリのノートルダム大聖堂も修復が進んだ

翌日に厚生労働省のフォーマットに記入してもらえば完璧

ボクの利用航空会社はエールフランスで、エールフランス側の搭乗前健康調査ではフランス語の陰性証明をアップロードすれば完了。ただしファストトラックのSOSアプリでは日本語あるいは英語の証明書が求められます。そのため翌日に医療機関を再訪し、日本でプリントアウトして持ってきた厚生労働省のフォーマットを提示。これに記入してもらったものをアップロードすると、証明完了となりました。

帰国時の流れは翌日の現場雑感でご紹介しています。
●ファストトラックのSOSアプリは青色にしておいたほうがいい

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🇫🇷ツール・ド・フランス2022特集サイト
🇫🇷ツール・ド・フランス公式サイト

コロナが契機…自転車による都市開発が海外で加速化

イタリア随一の都市・ミラノが2020年4月21日、市内の道路35kmを再編する計画「ストラーデアペルト」を発表した。時速30kmの速度制限を設け、自動車用の車線を縮小してその分を自転車用の走行路や歩道空間の拡幅に充てるという計画だ。

ミラノのブエノスアイレス通りは自転車通行帯が拡幅される計画に

ミラノの都市計画、ストラーデアペルト

ミラノは新型コロナウイルスにより、イタリア国内で最も大きな被害を受けた都市のひとつ。15km圏内に140万人が居住する密集都市で、住民の55%が通勤に公共交通を利用している。全国的な都市封鎖で自動車の交通量も30~75%減少しているが、移動制限が緩和されると混雑した公共交通を避けて自動車を利用しようとする人の増加が懸念され、その抑制がねらいとされている。

平均通勤距離は4km以内であることから、自動車から自転車や歩行などの通勤形態への移行は可能だと見込まれている。ニューヨーク市の交通局長を務めたこともあるジャネット・サディク・カーン氏は、「都市をいかにリセットさせられるか、そのいい戦略を提示するという意味で、ミラン市の計画は非常に重要だ。道路を新しい目線で捉え、実現させたい結果にかなうものになっているかどうかを確かめられる千載一遇のチャンスだ。すなわち、ある地点間の車での移動がなるべく早い時間で可能になっているかということばかりではなく、誰もが安全に移動してまわれるようにもなっているのかということだ」などとコメント。

パリは330億円で自転車環境整備

フランスの首都パリでも、新たな計画の下、180km分の自転車専用道路が既存の全長1000kmにおよぶ専用道路に追加整備されている。増加が見込まれる自転車利用者のために、新たに数万カ所、駐輪場も整備されるとのことだ。また自転車による観光が増え 環境に配慮した移動手段が重視される中、パリは2026年までに都市全体を自転車利用者にやさしい街にするための2億5000万ユーロ(約330億円)のインフラ計画を発表した。

フランスでは自転車フレンドリー度を格付けする制度がスタート。パリで除幕式のひもを引くアンヌ・イダルゴ市町(右から3人目)とプリュドム(左から2人目) ©A.S.O.

北欧デンマークの首都コペンハーゲンは「世界一の自転車都市」と呼ばれている。さまざまなランキングで、コペンハーゲンは「世界で最も自転車に優しい都市」のトップに選ばれている。

2022年にはコペンハーゲンが初めてツール・ド・フランスのスタート地点になる。コペンハーゲンは都市レベルで自転車インフラが整備されていて、自転車が人々の日常に根付いているため スタート地点として選ばれた。環境に優しい移動手段、そして健康面でも注目を集める自転車の利用をいち早く推進し、魅力的な都市を実現した都市がコペンハーゲンだ。

コペンハーゲンは「世界一の自転車都市」を目指し、市民へのアンケート調査を積極的に実施し、市民が自転車に乗りたくなる街づくりに取り組んできた。現在、コペンハーゲンでは自転車が通学・通勤の交通手段の約50%を占めている。自転車は最も快適で速く便利な上に、低価格であり健康や環境にもいいため需要が高まっている。

世界一の自転車都市「コペンハーゲン」

1907年にはすでに欧州トップクラスの自転車都市であったコペンハーゲンは、1960年代後半にはマイカーブームの到来により、自動車を優遇する政策にシフトした。しかし、1970年代にオイルショックが起き、石油に依存しない交通手段として自転車が再び注目を浴びるようになった。また、交通事故の増加に伴い、自転車専用道路を設置すべきだというデモが行われるようになる。そこで、コペンハーゲンは1980年代から集中的に予算を投下し、基本的な自転車インフラを整備すると、それに伴って自転車利用者も増加した。

世界のサイクルシティ、コペンハーゲン ©PIXTA

現在、デンマークでは長距離列車・電車・メトロ・バスなどへの自転車持ち込みが許可されている。長距離列車に自転車を持ち込む場合は、チェックインして自転車の追加料金を支払う。コペンハーゲン市内を走る近距離電車(S-tog)・メトロ・バスへの自転車持ち込みは無料。また、駅のホームにはエレベーターが設置されていて、簡単に自転車を持ち込むことができる。

デンマークでは長距離列車・電車・メトロ・バスなどへの自転車持ち込みが許可されている ©PIXTA

1982~2001年に基本的な自転車インフラを整備した後、コペンハーゲンは自転車を市の施策の優先事項に位置づけ 10年計画を打ち立てた。さらに、「世界一の自転車都市」の確立を目指して「自転車ストラテジー(2011~2025年)」を実行中だ。現在、コペンハーゲンの「自転車ストラテジー」は「コペンハーゲン気候変動適応計画2025」のプロジェクトの一環でもあるという。

コペンハーゲン市内の通学・通勤の交通手段(2018年) 出典:コペンハーゲン市

世界的に気候変動への関心が高まるなか、2009年に「第15回気候変動枠組条約締約国会議(COP15)」が開催され、コペンハーゲン市は「環境に優しい街づくり」という理念のもと「自転車ストラテジー」を加速させた。自動車に代わる交通手段として自転車の利用が増加すればCO2削減につながる。都市と地方を結ぶ「自転車用スーパーハイウェイ」45ルート(計746km)が完成すれば(2045年目標)、CO2排出量は年間1500トン抑えられるという。

コペンハーゲン市民が自転車を利用する理由(2018年集計) 出典:コペンハーゲン市

さらに、自転車は市民の健康維持にも役立つ。コペンハーゲン近郊で自転車利用率が10%アップすれば、病欠は10万9000日減少し、年間74億7400万円以上の経済効果が生み出されると予測されている。自転車推進プロジェクトは同時に環境保護や健康促進、経済効果にもつながるプロジェクトなのだ。 

●アプリケーションと連携できる電動アシスト自転車、 Connected Bike(コネクティッドバイク)のPR資料より

コロナ陽性のポガチャルは隔離練習でUAEツアー参戦へ

ツール・ド・フランス2連覇中のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)が新型コロナウイルスに感染。症状は軽いものの、隔離状態でのトレーニングを余儀なくされ、2月20日から26日まで開催されるUAEツアー出場を目指すことになった。

2021年のUAEツアー第3ステージで優勝したポガチャル ©LaPresse – Gian Mattia D’Alberto

UAEエミレーツのチームドクターが「ポガチャルが先週にコロナ罹患した」と明らかにしたのは2月8日。

「症状は軽いが、罹患者に対する措置に則って室内で隔離され、静かに回復できるように軽度な練習から再開した」

当初はチームスポンサーの本拠地で開催されるUAEツアーのため、本格亭なトレーニングをこなしての出場を計画していたが、「ポガチャルはまだ医療検査を受けなければならず、レースの準備を慎重に進めていきたい」とドクターがコメントした。

2022シーズンは新型コロナウイルスにより、南半球で開催予定だったツアーダウンアンダー、とカテルエバンス・グレートオーシャンが2年連続で中止。UCIワールドツアーの開幕戦となったUAEツアーに注目が集まっていた。

2021UAEツアー第4ステージ ©LaPresse – Fabio Ferrari

スカイブリッジラン&ウォークは感染拡大により中止

羽田空港と川崎市に架かるスカイブリッジ開通を記念して、2022年3月5日に開催を予定していたラン&ウォークイベント「スカイブリッジラン&ウォーク」は、新型コロナウイルスの感染急拡大に伴うまん延防止等重点措置の適用が決まり中止になった。

スカイブリッジラン&ウォーク実行委員会(アスロニア、ダブリューズカンパニー、デポルテほか)が1月23日に発表した。

●アスロニアの詳細ページ

コロナ禍で自転車ブーム…販売市場は2100億円超で過去最高

帝国データバンクの調査で、通期予想を含めた2020年度の自転車販売市場(事業者売上高ベース)は2100億円を超え、過去最高を更新した。過去最高の売上高・利益を計上した自転車販売店大手のあさひなどが牽引し、自転車販売市場の拡大が続いている。

自転車販売は、新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言の発出を受け、最繁忙期となる学校の卒入学シーズンの来店客が大きく減少。年度はじめから売り上げ大幅減のスタートを余儀なくされた店舗が多かった。特に、ショッピングモールなどに店舗を構える自転車店では臨時休業や時短営業、客足減といった影響がその後も長引いたことで業績面への影響が心配されていた。

しかし、コロナ禍が拡大・長期化するなかで、感染リスクの低いパーソナルな移動手段として自転車が徐々に見直され、電動アシスト自転車を中心に通勤・通学用としてサイクル人気が高まった。販売店でもオンライン販売を急ピッチで進め、リアル店舗の落ち込みをネット販売でカバーする体制が整うなど販売環境の好転が追い風となり、業績の維持や増収に結びつけたケースも多かった。

その後も長期にわたる外出自粛から気軽なレクリエーションとしても注目されたことで、大人から子供向けまで幅広い商品で例年に比べて新車販売が伸び、数年間乗っていなかった自転車のメンテナンス需要も活況だった。ウーバーイーツをはじめ自転車を活用した配送サービスも広がり、配達員の自転車需要が増えたことなども大きく貢献した。

高価な電動アシスト自転車、5年前から販売5割増
小売最大手のあさひは売上高が過去最高
経済産業省の調査によると、2020年の完成自転車の出荷数量は前年を1000台ほど下回る約162万6000台になり、2019年と同水準にとどまる。他方、出荷金額ベースでは前年からおよそ40億円増加、1台当たり単価も5年前の3万4000円台に比べて1万円高い4万7000円台となるなど、自転車の高額化が進んでいる。

こうした背景には、従来の一般的なシティサイクルに比べ、より利便性や趣味性が高い自転車のニーズが近年急拡大していて、販売台数の多くを高額な自転車が占めている点が挙げられる。自転車産業振興協会の調査によると、2020年における1店舗当たりの新車販売で最も販売台数が多かったのは、安価な一般車(軽快車)の101台だった。ただ、販売台数自体は前年を割り込む水準が続いているほか、2020年の販売台数は2015年に比べて約4割の減少となっている。

代わって近年の自転車販売の主軸となっているのがスポーツタイプの自転車と電動アシスト自転車で、スポーツサイクルは55台、電動アシスト自転車は27台が、それぞれ1店舗当たりで販売された。いずれも一般車に比べて販売台数では大きく差が開くものの、近年は販売台数が大幅に増加していて、特に電動アシスト自転車は5年前から販売台数が5割伸びるなど急激な成長が続く。

好調が続くものの、 品薄や輸入価格の高騰などが不安要素 

今後もコロナ禍による外出制限や在宅勤務の普及・拡大による運動不足の解消といったニーズが強く残るとみられ、子供用から大人向けまで、修理需要も含めて自転車販売店には追い風が吹く。また、アウトドアブームの拡大でクロスバイクなどの需要増も見込めるほか、日本市場でも存在感が出始めた販売単価が50万円を超える電動スポーツサイクル(eバイク)の普及も、自転車販売店の経営を強く下支えしていくとみられる。そのため、2021年度の自転車販売市場は20年度をさらに上回る2200億円台の到達も想定され、販売環境全体は引き続き好調を維持する模様だ。

一方で、世界的なサイクル需給のひっ迫により有名自転車ブランドでは入荷遅れもみられるほか、多くがアジアで生産される自転車部品も、現地のコロナ感染の拡大で操業が不安定なことから供給が追い付かず、修理のメドが立たないといった悪影響も目立ちはじめている。

特に完成車は不安定な部品供給を背景に生産量が安定せず、輸入品を中心に2〜3万円台の量販価格帯でも調達難から価格が高騰傾向となっていて、低価格を武器にしてきた自転車店では利益確保ができず苦戦もみられる。

「町の自転車店」をはじめ中小店舗でも、大手小売業者の進出に加えホームセンターなど異業種との競争激化に晒されているケースもあり、市場環境が好調な一方で経営の厳しさが増している事業者も増えている。