東京五輪の自転車競技に16選手…略歴と競技日程・会場

2020東京五輪の自転車競技に出場する日本代表16選手が決まった。これまでの五輪自転車で日本選手が獲得したメダルは銀1、銅3で、すべてトラック男子によるもの。自国開催となる今回は女子や新種目のBMXフリースタイルにも期待がかかる。国内自転車界悲願の金メダル獲得を目指してそれぞれが練習を積み重ねている。

2020東京五輪のピクトグラム(フレームタイプ)

自転車競技はトラック、ロード、MTB、BMXの4種目

東京五輪で開催される自転車競技は大きく分けてトラック、ロード、MTB、BMXの4つがある。トラックは男女ともに6種目が行われ、そのうち3種目がスプリント系の短距離レース。日本はすべてこのカテゴリーで男子選手が五輪メダルを獲得してきた実力があり、悲願の金メダルも十分に期待できる。バンクと呼ばれる自転車競技場は会場ごとに特性があるので、五輪の舞台となる伊豆ベロドロームで長期的な強化合宿を積む日本勢は地の利が行かせる。

ただし今回の金メダル最有力はトラック中距離の女子。2020年2月に行われた世界選手権女子オムニアムで優勝した梶原悠未(かじはらゆうみ)だ。トラック日本女子では初、男子を含めても33年ぶりの世界チャンピオンだ。オムニアムは1日で4種目を行い、その合計で競う複合種目。世界選手権よりも五輪のほうが参加選手数が絞られるため、ライバルの数も少なくなる。梶原が順当なレース展開を見せれば金メダル獲得も夢ではない。

梶原悠未がオムニアム出場時に使用するアルカンシエルデザインバイク

コロナ禍による大会延期も「強くなるために練習する時間が持てた」と梶原。「日本代表としての誇りをもって必ずオムニアムで金。有言実行を胸に臨みたいです」

新種目として採用されたBMXフリースタイルでは中村輪夢(なかむらりむ)に期待。20インチ車輪の自転車に乗り、人工セクションを使って宙返りするなど、いかに難易度の高い技を決めて高得点をたたき出すかなどで争われる。世界大会での表彰台の常連だけにメダル圏内。

「悔いのない走りをしたい。それができればメダル獲得という成績もついてくると信じています」と中村。

中村輪夢 ©Eisa Bakos/Red Bull Content Pool

MTB女子代表の今井美穂は群馬県前橋市立新田小の教員を務めながら、平日の夜と週末に練習を続ける。

「応援してくれる子どもたちがいなかったら、五輪なんてあきらめていたかも知れません。その恩返しとして子どもたちになにかを伝えられたら」と意気込む。

日本勢の五輪メダルは銀1個、銅3個

今井美穂は東京五輪代表リモート記者会見も小学校から参加した ©JCF

日本自転車選手の五輪メダルは過去に4個で、すべてトラック短距離種目。1984年ロサンゼルス大会の個人スプリントで坂本勉が銅、1996年アトランタ大会の1kmタイムトライアルで十文字貴信が銅、2004年アテネ大会で長塚智広・伏見俊昭・井上昌己の日本チームが銀、2008年北京大会のケイリンで永井清史が銅。

2020東京五輪 自転車競技の日本代表16選手

◆トラック短距離
新田祐大
(ドリームシーカー)

◆トラック短距離
脇本雄太
(ブリヂストンサイクリング)

◆トラック短距離
小林優香
(ドリームシーカー)

◆トラック中距離
橋本英也
(ブリヂストンサイクリング)

◆トラック中距離
梶原悠未
(筑波大大学院)

◆トラック中距離
中村妃智
(日本写真判定)

◆ロード
新城幸也
(バーレーンビクトリアス)

◆ロード
増田成幸
(宇都宮ブリッツェン)

◆ロード
与那嶺恵理
(ティブコシリコンバレーバンク)

◆ロード
金子広美
(イナーメ信濃山形)

◆MTBクロスカントリー・オリンピック
山本幸平
(ドリームシーカー)

◆MTBクロスカントリー・オリンピック
今井美穂
(CO2bicycle)

◆BMXレーシング
長迫吉拓
(日本写真判定)

◆BMXレーシング
畠山紗英
(日本体育大)

◆BMXフリースタイル・パーク
中村輪夢
(ウイングアーク1st)

◆BMXフリースタイル・パーク
大池水杜
(ビザビ)

2020東京五輪 自転車競技の日程と会場

ロード
●開催日程=7月24、25、28日
●開催場所=東京都府中市〜富士スピードウェイ

MTB
●開催日程=7月26、27日
●開催場所=静岡県・伊豆MTBコース

BMX
●開催日程=7月29日〜8月1日
●開催場所=有明アーバンスポーツパーク

トラック
●開催日程=8月2〜8日
●開催場所=静岡県・伊豆ベロドローム

●2020東京五輪のホームページ

山本幸平と今井美穂の五輪代表が全日本選手権クロスカントリー制覇

第33回全日本自転車競技選手権マウンテンバイク(クロスカントリー競技) が、11月8日に富士見パノラマリゾート(長野県富士見町)で行われ、ともに東京五輪代表の山本幸平(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM)と今井美穂(CO2bicycle)が優勝した。

全日本チャンピオンの山本幸平 ©日本自転車競技連盟
今井美穂 ©日本自転車競技連盟

コロナ対策をとりつつ大勢のギャラリーが見守 る中、レースではオリンピック代表内定の2人がビッグレースで安定した強さを見せつけ優勝した。

全日本自転車競技選手権マウンテンバイク(クロスカントリー競技)のエリート男子 ©日本自転車競技連盟
山本幸平 ©日本自転車競技連盟
山本幸平 ©日本自転車競技連盟
全日本選手権エリート女子レース ©日本自転車競技連盟
今井美穂 ©日本自転車競技連盟
全日本選手権を制した今井美穂 ©日本自転車競技連盟

男子エリート 4.40km x 5Laps = 22.00km
優勝:山本幸平 DREAM SEEKER MTB RACING TEAM 北海道 1:18:25.05
2位:平野星矢 TEAM BRIDGESTONE Cycling 長野 1:19:40.40
3位:沢田時 TEAM BRIDGESTONE Cycling 滋賀 1:20:10.36

山本幸平を中央に左が2位平野星矢、右が3 位沢田時 ©日本自転車競技連盟
全日本自転車競技選手権を制した山本幸平 ©日本自転車競技連盟

女子エリート 4.40km x 3Laps = 13.20km
優勝:今井美穂 CO2bicycle 群馬 58:13.31
2位:末政実緒 ヨツバサイクル 兵庫 1:02:48.78
3位:橋口陽子 AX MTB team 東京 1:07:06.99

今井美穂を中央に左が2位、末政実緒、右が3位橋口陽子 ©日本自転車競技連盟
全日本チャンピオンの今井美穂 ©日本自転車競技連盟

●日本自転車競技連盟のホームページ

子どもたちがいなかったらあきらめていた…東京五輪MTBの今井美穂

第32回オリンピック競技大会(2020/東京)自転車マウンテンバイク競技の日本代表女子選手である今井美穂(CO2bicycle)が1年後の大会に向けて抱負を語った。6月5日13時からオンラインWeb会議サービスのZoomを使って行われた。

今井美穂

「小学校の子どもたちが喜んでくれました。五輪代表に決まったときは学校の廊下でハイタッチ。昨年度に担任したクラスの子どもたちが円陣になってお祭り騒ぎで囲まれました」

群馬県出身として東京五輪の代表選手第1号となった今井。出身は富岡市で、現在は前橋市立新田小の教員を務めながら、平日の夜と週末に練習を続ける。

職場も練習時間にあてられるようにと、今学期からクラス担任を外してくれた。現在は5、6年生に算数や音楽、書写を教える。

勤務先の小学校でNHKや共同通信のインタビューに応える今井美穂 ©JCF

教員になってから自転車に乗り始め、まずシクロクロスで頭角を現してからMTBにも参戦するようになった。急成長の女子選手だけに、海外レース経験はほとんどない。

「五輪代表になれてホッとしています。これまでの1年間は代表に選ばれるためのレースをしてきましたが、大会が1年延期になったことでこれからの1年間はしっかり走るための準備をしていきたいです」

全日本MTB選手権で今井美穂(CO2bicycle)が2連覇 ©2019 JCF

新型コロナウイルス感染拡大による東京五輪の延期もポジティブに考える。

人里離れた山間部で練習するMTBは、人との接触をできるだけ避けろと命じた今回の措置にあまり影響されない。

「仕事をしているので、平日はもともと帰宅後に自宅で2時間ほどのローラー練習だけでした。週末も人のいないところを走ることができるので、これまでとあまり変わらない練習ができました」

今井美穂 ©JCF

前橋市は赤城山や榛名山を見下ろす環境にあり、今井はクルマにロードバイクを積んで郊外まで移動し、長いときで100kmのロード練習をこなす。しかしオフロードを走り込む環境は整っていない。MTBを使っての練習がなかなかできず、テクニカルな部分のスキルアップは今後1年間の課題だ。

「応援してくれる子どもたちがいなかったら、五輪なんてあきらめていたかも知れません。その恩返しとして子どもたちになにかを伝えられたら。いくつになっても夢を追いかける。こういう生き方もあるんだなって」

日本勢として過去最高の成績を修められるように…鈴木雷太コーチ

日本MTBチームの鈴木雷太コーチは、「1996年のアトランタ五輪から採用されて7大会目。まだ新しい種目と言えますが、日本勢として過去最高の成績を修められるように準備していきたい。今井選手はまだ経験が浅いが、多くの声援が後押ししてくれるのでぜひその走りに注目してほしい」と語った。

鈴木雷太コーチ ©JCF

自転車マウンテンバイク競技の補欠選手は男子が平野星矢(ブリヂストンサイクリング)、女子が川口うらら(日本体育大/FUKAYA RACING)。

自転車マウンテンバイク競技で日本が獲得した参加枠はクロスカントリー・オリンピック男子1、クロスカントリー・オリンピック女子1で、どちらも開催国枠として得た。

今井美穂(IMAI Miho)
1987年5⽉29⽇(33歳) 群⾺県富岡市出⾝ ⾝⻑:161cm 体重:54kg
所属:CO2bicycle
出⾝校:東京⼥⼦体育⼤

●東京五輪のホームページ

今井美穂は初、山本幸平4大会連続…東京五輪MTB代表に

第32回オリンピック競技大会(2020/東京)の自転車マウンテンバイク競技日本代表選手に山本幸平(ドリームシーカー)と今井美穂(CO2bicycle)が選出された。日本自転車競技連盟が6月3日に発表した。山本は2008北京、2012ロンドン、2016リオに続く4大会連続。今井は初選出。

東京五輪MTB代表の今井美穂(左)と山本幸平
山本幸平
今井美穂

期待に応えるため練習に励み、本番で最高の走りを…山本幸平

「東京オリンピック内定が決まったこと、今までの競技人生の中でも一番うれしい報告でした。まずは、ここまで応 援と支援していただいた多くの方への感謝の想いを伝えたいと思います。本当に、ここまでサポートしてくれてありがとうございます」と山本。

山本幸平

「山本ファミリーや妻と娘のサポートがなければ、リオ五輪後から競技者としてのメンタルを保つことができなかったと思います」

「感染症問題で1年延期となりましたが、僕が1年前から日本代表に内定をいただいたことはとても素晴らしく、本番に向けて準備を確実に進められる期間を与えてくれたことに感謝します。そして、日本代表として、みんなの期待に応えるために、練習に励み、本番で最高の走りをします。 それと同時に、残された期間で若手選手と切磋琢磨してみんなで強い日本チームを作り上げ、今後のマウンテンバイクの発展に貢献していきたいです」

今から胸が高まり、楽しみでいっぱい…今井美穂

「はじめに、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、医療機関に大きな影響が及んでおりますが、最善を尽くして感染予防や診療などの業務に携わり、地域医療を支えてくださっている医療従事者の方々や、私たちの生活を支えてくださっている多くのみなさまに、心より敬意を表します」と今井。

今井美穂

「2020東京オリンピックMTB−XCO代表選手として、正式に内定をいただきました。 幼い頃 から漠然と「オリンピック選手になりたい」という夢を描いてきましたが、自国開催でもある記念すべき東京オリンピックの代表選手に選出され、幼い頃からの夢を叶えることができたことを本当にうれしく思っております。 新型コロナウイルス感染症の影響により、開催が1年間延期という形になってしまいましたが、全世界においてコロナウイルス感染症が1日でも早く終息されることを願いながら、この延期された期間をプラスにとらえ、自分自身のフィジカル面・スキル面をともに向上させることができるよう、トレーニングを重ねていきたいと思います」

「自国開催の東京オリンピック。 たくさんの方に応援してもらいながら走れることを想像すると、今から胸が高まり、楽しみでいっぱいです。みなさんに最高の走りをお見せすることができるように1日1日を大切に、準備をしていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします」


MTB選手選考について日本自転車競技連盟は選考基準発表から約2年間の実績と、さらに直近1年間の成績(UCIポイント)を基準とするとしてきた。しかし新型コロナウイルスの影響による2020年のオリンピック延期、そして3月15日以降UCIポイントの付くすべてのレースは停止となり、 選考期間は5 月28 日を待たずして約75 日間のチャンスが失われた。

これらの影響を考慮した選考期間の延長、また5月15日付けのUCI追加発表を受けた2021シーズンのワールドカップ2大会追加なども検討してきたというが、
・資格基準期間2年間の約90%、個人ランキング換算期間1年間の約80%はすでに消化されていて、一定の判断ができる期間と判断できること
・今後の世界的な活動計画も定まらない中、また、安全性についても不安のある遠征の助長を促しかねない期間設定は得策ではないこと
・期間延長を行うよりも選考を早期に決着させることが選手への配慮、安心感を与え、1年後の大会に向けて最大限調整することができること

これらのことから当初の基準に従って、競技者の選考したという。

●日本自転車競技連盟のホームページ

山本幸平11度目V、今井美穂2連覇…全日本MTB選手権

第32回全日本マウンテンバイク選手権大会が7月20、21日に秋田県仙北市のたざわ湖スキー場、秋田県立田沢湖スポーツセンターで開催され、五輪種目のクロスカントリーは男子エリートが山本幸平(Dream Seeker Racing Team)が5年連続11度目の優勝。女子エリートは、今井美穂(CO2bicycle)が2連覇した。

男子エリートをスタートする山本幸平 ©2019 JCF
男子エリートは山本幸平が5年連続11度目の優勝 ©2019 JCF
男子エリートを制した山本幸平(中央) ©2019 JCF

男子エリート優勝の山本幸平のコメント
「勝たないといけないプレッシャーがあるなかで、今までで1番リラックスして挑めた。世界選手権やワールドカップでトップ10を取るのが目標。アジア人でもできるというのを見せたい。オリンピックに向けてはまだまだ長い戦いがあるので、それだけを考えすぎないで、一番を楽しんで自分がやれることをやっていって、5月の段階で決まれば、自国開催でもあるので調整できる自信はある」

女子エリートは今井美穂(CO2bicycle)が2連覇 ©2019 JCF
女子エリートを制した今井美穂(中央) ©2019 JCF

●日本自転車競技連盟のホームページ